JKからのお願いです

「すいません、メッセージプレートをつけて頂けますか?」

 

ケーキ屋さんのバイト中、学校帰りと思われる高校生2人組が来た。素朴な可愛さがとても愛らしい、まだ背も伸びきっていないような子たちである。

 

2人がケーキを注文したあと、こそこそと1人だけカウンターにやってきた。少し緊張ぎみに、メッセージプレートは付けられるかを聞いてくる。もちろん。厨房に依頼する。

 

サプライズかなあ〜かわいいなあ〜こういうの、最高だよな〜あの2人仲よさそうやし、フォロワー特典を知って秒でTwitterフォローしてくれたし。

 

そう思いながらボケーっとしていると、厨房から「野村さん持ってって!こういうのタイミングが大事やから!早く!」と異様に急かされた。1週間前に働き始めたばかりだから知る由も無いが、気を利かせてBGMをバースデーソングにしてくれるらしい。

 

音楽が流れ始め、少し浮き足立った店内を通り抜け、ロウソクが消えぬよう慎重にケーキを運んだ。「お誕生日おめでとうございます」そう言いながらケーキを差し出すと、誕生日ガールはもう1人の女の子に「も〜余計なことしやがって〜」と照れ臭そうに笑みを浮かべた。

 

正直、鳥肌が立った。なんというか、完璧だった。サプライズというものを、私は殆どしたことがないように思うが、関わる時は毎回鳥肌が立ってしまう。ドキドキしたり、グッときたり、ああ、愛が揺れるって鳥肌が立つことなのかなと思う。

 

その2人のお会計は、誕生日じゃない女の子が一緒に払っていた。高校生のお小遣いから2000円ちょっと、それは少し雑誌や漫画を買うのを我慢しなければならない金額で、しばらく塾の前にジュースやブラックサンダーを買うのをやめないといけないかもしれない。

 

ケーキ屋さんを始めて1週間、やっぱり飲食は飲食だなあと半ば諦めのような気持ちも生まれていた。けれど、ケーキ屋さんというのは本当に、幸せのお手伝いをしているのではないかと思った。

 

ケーキがある世界とない世界、結局ある世界の方が幸せだと思わない?

 

今日:行きたかったカフェがしまっていた

明日:そのカフェにリベンジします