帰りたい 帰れない

帰省から自宅へ戻るときに流れるカントリーロードはすごい。ふだんからいい曲だなとは思っていたけれど、なんてことだ。ここまで情趣あふれる曲とは思っていなかった。

 

ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢みてた

さみしさ 押し込めて 強い自分を守っている

 

進学、就職を折に一人暮らしを始めた若者。あれほどうざったく感じていた家族のしがらみから解放され、門限も無い、好きな時に好きなものを食べられる生活へ。一人で暮らすなんてなんて夢が詰まっているんだろう。

 

そんな若者もすぐに気がつく。一人は独りなのだと。一人でいる時には感じ得なくとも、節目に家族と再会し家族の一部へと戻ったあと、そこから分離してまた一人になることは、家族と共有していた部分を失う感覚に襲われおそろしく孤独なのだ。

 

それでも大丈夫、私はこれまでも一人で生きてきた。そんなさみしさ、今だけさと気を取り直し一人でも生きられていた強い自分へと戻ろうとする。

 

振り向けば実家へ続く道、バスに乗らなければ地元のまま、新幹線だって降りて仕舞えばいい。そんな中で実家から遠ざかり、バスに重い足を乗せ、仕事に間に合うように新幹線へ乗る。

 

カントリー・ロード この道 ずっとゆけば

あの街に 続いてる 気がする カントリー・ロード

 

いつまでも心を捕らえて離さない離れがたさを、少しずつ速まる歩調で振り払うのだ。