美味しい麦茶

わたしは普段、お茶を自宅で沸かしている。外でペットボトルのお茶を買うのはあまりに不経済であるし、なによりわたしはお茶をよく飲む。

 

大抵それはほうじ茶。烏龍茶よりさっぱりしすぎず、麦茶のようなクセがない。麦茶も飲めることは飲めるが、なんだか少し苦手なのだ。

 

それは中学の時、数学に手も足も出ないくらい苦手だったわたしが職員室に質問に行った時の事だった。担当の数学教師が不在で、ドア付近にいた小柄な女性教師に教えてもらえないかと頼んだ。人当たりがいい彼女は、よく教えてくれた。

 

彼女は一生懸命で、それが十分に伝わってくるのだが、理解を促す力はないタイプだった。そしてなにより、彼女が話すたび、麦茶の香りが私の鼻を襲ってきた。要するに口が臭かった。

 

他にも口が臭い教師はいて、それは例えばタバコを吸った後にコーヒーを嗜む、私の中では最悪の口臭を生み出す組み合わせなのだが、そんな状態で生徒にちょっかいを出す教師もいた。

 

口臭の思い出としてすごく印象が強い麦茶を、一人暮らしを始めてからは殆ど飲まなかった。ほうじ茶や烏龍茶、緑茶を飲んでいた。

 

最近、ほうじ茶を切らした。あちゃーと思いガサゴソ漁ると、留学に旅立った友人の置いて行った麦茶パックが発見された。

 

味自体は嫌いではないから、仕方なく最近は麦茶を飲んでいる。麦茶を飲んだ後、臭わないかな?などと思いつつ。

 

昔、家族全員で並んで眠っていたくらい小さかった時、咳が止まらない夜があった。眠気で朦朧とする意識を咳に揺さぶられ、ひどい気分だった。

 

そういう時はきまって母が私を抱き起こしてくれて、夜中にそっとあったかい麦茶をマグカップで飲ませてくれた。寝る前に水分を取ると決まって朝に失敗するような年頃だったから、特別に飲むことができている気分だった。

 

最近早起き習慣をつけようと8時に遠くに置いたアラームを止めるようにしている。どうにも眠いな…と思いながら洗顔し、麦茶を寝ぼけ眼で飲む時、ふと母の温もりを思い出すのであった。

 

読んだ本:本日は、お日柄もよく/原田マハ

アラームの曲:トライ・エブリシング/Dream Ami