ガラの悪いケーキ屋さん

新しいバイトを来月から始めることになった。家から歩いて2分程度のケーキ屋さんだ。大学4年生の夏休み終わりという、採用するにはワースト1位を誇りそうなレベルで微妙な時期にも関わらず運良くご縁があった。

 

ケーキを自ら作っている店長は、ころっとした、"この人がケーキを作って売ったらまあ間違いなくウマいだろうな"と思えるような人でとても好感が持てた。心なしか歴の長いバイト先の卒業していった先輩に似ていて、とても親近感が湧く。

 

「うちはケーキ屋と言っても、やっぱこの辺の土地柄、ガラが悪い人も来るのでそれだけは覚悟してね(笑)」

 

生クリーム×ヤクザ。イチゴ×サングラスのオジさん。チョコレートソース×矢沢永吉

 

どうにも結びつかないが、あちらの世界に生きるガラの悪いオジさんたちが、ケーキを食べる時だけは慎重にフォークを持つ手にもう片手を添えているのを想像するとめちゃくちゃかわいい。それはもう、かわいい。

 

今日、歴の長いバイト先で威勢のいいオジさんに「(セルフレジの使い方)教えてくれぇや!」と言われた。借りているDVDをちらと見ると、ぜんぶ任侠ものだった。よく見るとオジさん、それっぽい服装、それっぽい顔つき、それっぽいハンドバッグ(とても丈夫そう)。

 

それでもやはり機械には少し戸惑うようで、去り際のオジさんは「ぉぅ…ありがとうな」と言いながらガニ股で去っていった。少しときめいた。

 

ガラの悪いオジさんが来るバイト先で働きながら、ガラの悪い土地にある家に帰り、ガラの悪いケーキ屋さんでまたバイトをする。そしてケーキを食べ過ぎてグレてしまった私は酒に溺れ、ガラガラ声になってしまう。

 

いやだなあそれだけは

 

今日の晩ごはん:セブンイレブンの高菜と明太子が乗ったビーフン(とてもお気に入り)

実は:ケーキ屋さんに落とされたらセブンイレブンでバイトしようと思っていた